今回は、地域のニーズに対応した医療サービスの提供を基本理念に掲げ、地域への発信に取り組む中部医師会立三朝温泉病院の森尾泰夫院長を訪ね、高齢者の転倒骨折についてインタビューしました。
―骨量は何歳まで増えますか。
骨量は、20代で最大になり、若い時から骨の貯金をしておくことが大切です。高齢になると「骨をとかす働き」と「骨をつくる働き」のサイクルが乱れ、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)になりやすい骨になります。もろくなった骨に大きな外力がかかると骨折しますが、原因のほとんどは転倒によるものです。
―高齢者の骨は簡単に折れる?
お年よりは転倒しやすく、骨折もしやすいです。鳥取県は、骨折についての研究が進んでいる県で、統計的には、80歳の女性のうち100人に1人が骨折しているようです。
―骨折しやすい部位はどこ?
転んで折れる部位は、その人の運動神経にもよります。手が出る場合は手首、肩から落ちる場合は上腕、最も怖いのが手も肩も出ない場合に体ごと倒れて足の付け根が折れる大腿骨頚部骨折です。
―どこで転ぶケースが多い?
屋外よりも家の中で転ぶ人が多いのが特徴です。夜トイレに行こうとしてあわてたり、敷居につまづいて転ぶ。屋外では冬に滑って転ぶなどです。冬の朝、凍った路面で転んで病院へ搬送される患者さんが結構います。
―転ばないためには…
まず、生活環境を整えること。寝室からトイレまでの間に物を置かない、床は磨きすぎない、カーペットの縁はしっかり止める、照明はできるだけ明るく、もちろん手すりを付けることも大切です。
凍った道は歩かない、スリッパ、サンダルなどの足にフィットしないものは履かない、適度な運動と日光浴、カルシウムやビタミンDの摂取などは日ごろから心がけたいものです。
万が一、骨折をしても今は早期手術、早期リハビリをします。早く起きて動くことにより早く退院ができ、寝たきりの防止を図ります。大腿骨頚部骨折で手術をした患者さんが、術後1週間で歩くこともあります。
―運動するコツは?
運動することを楽しめることが大切です。健康は幸せな日常生活をおくるための手段です。何が何でも健康のために頑張るというより、人生を楽しむという心がけが大切ではないでしょうか。
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インタビューの間、終始穏やかな表情でお話をされた森尾院長ですが、健康の秘訣は1日6時間の睡眠だそうです。院長になられてからタバコをやめ、趣味はラグビーで、仲間とニュージーランドまで遠征した体験もお持ちです。
(聞き手・前田保健師)
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